2005年11月09日

『同じ月を見ている』

 幼なじみのエミの心臓病を治したい一心で、医者の道を歩む鉄矢。
 恋人同士の二人のもとに、ある知らせが届く。
 もう一人の幼なじみのドンが、刑務所を脱走したというのだ。
 人の心を絵に描き出し、その人を癒してしまう不思議な力を持つドン。
 誰よりも純粋な心を持つドンに、大切なエミを取られてしまうのではないか・・・。
 そんな不安と暗い思い出を抱える鉄矢、
 そして二人の間で心が揺らぐエミの前に、
 ドンが7年ぶりに現れる。

同じ月を見ている@映画生活


 泣いたね。

 一言で言うと、泣いたね。

 二言でいうと、めっちゃ泣いたね。




 『傷つかない人はいない
  傷つけない人も』

 で涙腺刺激。

 鬼気迫った様子で絵を描くドンのバックに流れる岸田今日子の語りでひと泣き。

 そしてドンの
 「ねんりき、しよう。
  エミと、三人で、いっぱい念力しよう。
  てっちゃんが思ったこと、僕がかくから」

 ……号泣。


 窪塚洋介復帰第一作として語られることが多い作品だけど、
 明らかに、主役はドンでしょう。

 三角関係の恋愛を描いた映画ですらないと思う。
 ドンの物語といって差し支えないんじゃないかな。
 
 普通の人間が世間と折衝して生きていくためになくしてしまった何かを持っている人。
 他人の裏切りや嘘、逆境、暴力を憎んでしまいそうな自分と戦い続けた人。

 そんなドンを描くために、てっちゃんやエミが配置されていた。


 また、そんなドンを演じる、エディソン・チャンの、眼がすばらしい。
 窪塚洋介は完全に食われていたね。
 山本太郎とのシーンはどれも秀逸。

 これから出てきてほしい役者さんですね。


 黒木メイサは……う〜ん。
 モデルのほうが向いてるんじゃないかな。

 キメ顔つくるのはうまいんだけど……。
 子ども時代の顔も怖かったし……って、それはメイサじゃないか(笑)。



 まあ、役者さんにはそれぞれの好き嫌いもあるから置いておいて。


 そのほか、印象に残っているところといえばやっぱり手術のシーンでしょうか。
 はじめは、「ここまで大写しにする必要あるの?」と思っていましたが、
 ドンの心臓が切り離されるシーンへの布石だったんですね。
 ラストのあのシーンはとても活きていましたから、そこから考えると、「なるほど!」という感じです。
 
 それに、見終わってから時間をおいた今、考えると、
 この作品のテーマって、「世界の汚さ」を飾らずに描くことでもあるのかなと思います。

 お話としてまとめるためには、感動的なエフェクトをかけないと仕方がないけど、
 現実には、追い詰められたときに赤の他人からの救いの手が差し伸べられる幸運なんて、少ないわけだし(ないとは思いたくないけど)。
 ドンと似たような境遇で、それこそゴミのような扱いを受け続けてそのまま死んでいった人は、たくさんいる。
 そしてその人たちの苦しみが本当の意味で描かれることは不可能。
 だって、それでは観客を満足させる「物語」にはならないから。

 それでも、少しでも、「現実」というものをかんじさせるため……、そうであれば、長い手術シーンも、テーマを描く上で必要なものだったのかも。


 スプラッタ苦手な人も多いと思うけど、できれば、目をそらさずに見てほしいです。



posted by なにわの・あきら at 17:30 | Comment(7) | TrackBack(16) | 映画・演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トラックバックありがとうございました。
いろいろとつっこみどころはありましたが、私も感動して泣きました。なかなか良い作品でしたね。
私もトラックバックさせていただきました。
Posted by 殿 at 2005年11月12日 22:33
>殿さん

 TB返しありがとうございます(^^)。
 試写会で、周りからもすすり泣きが聞こえてきました。
 エディソン・チャン、よかったですよね〜。
Posted by なにわの・あきら at 2005年11月13日 01:02
はじめまして。

残念ながら泣くとこまで感情移入できませんでした。
子供がテントウムシの絵を書くラストシーンも
あ〜見えちゃったなと。

それよかエミはドンが無実の罪で服役してたのを
知っても鉄ちゃんでええんかという疑問。

わめいたり、さけんだり、暴れたりするほど
人間の小ささが表にでる鉄ちゃんというキャラ。
それを狙って演技してるなら
たしかに思いいれというか意気込みが感じられる。
・・かもしれないが、どう考えてもこの映画の彼
主役の貫禄なかったです。
Posted by Ageha at 2005年11月21日 13:03
>Agehaさん

 はじめまして。TB & コメントありがとうございます。
 私も後日談は蛇足だと思います。

 エミについてはむしろ、
 父親が死んだのはあんたのせいだろうと言いたい。
 思考の流れが、「ドンちゃんの人殺し→ホントは許してた→鉄ちゃんだったなんて!」になってるのがちょっと、エミに感情移入できなかった要因かも。「私がわがままいったばっかりに……」って考えには到らないのかと。

 ドンの器の大きさを表現するために、あえて周りの人間を矮小に描いたのなら、大成功かとは思いますが。

 とりあえず、「窪塚復帰作」としては失敗ですよね。
 私、役者・窪塚を見るのは初めてですが、とても上手い役者には見えませんでした。
Posted by なにわの・あきら(管理人) at 2005年11月21日 23:33
TBありがとう。
おっしゃるように、これはあくまでも、「ドン」という存在を描き出すことに主題があります。
原作には、映画より、ずっと深く、ドンという稀有な存在が描かれています。
Posted by kimion20002000 at 2006年06月12日 02:59
>kimion20002000さん
 原作、読んでみました。
 映画の内容から、せいぜい単行本1冊弱程度の長さかと思っていたので、意外な長さに驚きましたが、その分量以上に、ドンの書き込みがされていて、一気に読んでしまいました。
 「人間はゴミ箱」というセリフ、映画と原作とで、作中での重さも捉えられ方も違うように思いましたが、私は原作の方が好きですね。
Posted by なにわの・あきら(管理人) at 2006年06月15日 21:16
はじめましてこんにちは!
AXNと申します。

先日、初めてWOWOWで「同じ月を見ている」を見たのですが、とてもよかったです…エディソンさんに一目ぼれしてしまいました笑

ドンちゃんの魅力、というのでしょうか。もし彼のような人と知り合えれば…と、そんなことばかり考えてしまいます。

とても悲しかった。
一晩中、この映画のことが頭から離れなくて、何故かとても悲しかった。ドンちゃんをエディソンさんが演じたのは大変意味のあることだったと思います。彼でなければここまで感情移入できなかったと思います。

「何故彼を助けてあげられなかったのだろう」と、映画の世界の中で、一人そんな気持ちにかられたのでした。危ないですかね?笑

この映画の「ドンちゃん」には本当に色々なことを考えさせられました。そして、大切なことを思い出せそうな気がします。
Posted by AXN at 2007年01月27日 19:54
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